椿に分銅繋ぎ
— 富を呼ぶ“分銅”と、気品ある椿を結んだ吉祥の意匠
今回の図案は、明治36年に印刷・発行された図案帖をもとにしています。
「分銅繋ぎ」は、重さを量るための“分銅”を意匠化したもので、円形の左右がくびれた独特のシルエットを、波のように連ねて構成した文様です。曲線が緩やかにつながることで、画面全体に心地よいリズムが生まれます。

この「分銅」という形、実は江戸時代、天下人が金銀をこの形に鋳造して蓄えたという逸話があり、いつしか“富を呼ぶ縁起物”として親しまれてきました。重しの役割を持つ分銅が、逆に運を引き寄せる象徴になったというのは、なんだか日本らしい発想で、ちょっと微笑ましくもあります。
本図案では、この分銅繋ぎのすき間から、ふっくらとした椿の花がのぞきます。椿は、冬から春にかけて凛と咲く花で、気品や生命力の象徴とされてきました。古い文様帳にも「寒中に花を開く姿は、めでたき兆し」と記されることがあり、当時の人々にとっても特別な花だったことがうかがえます。

富の象徴である分銅と、力強く美しい椿。
この二つを組み合わせることで、「豊かさが続くように」「力強く花開く一年でありますように」という願いが重ねられた、吉祥性の高い文様となっています。
分銅のリズムと椿の丸みが重なり合う独特の構成には、明治という時代の “新しいデザインへの好奇心” も感じられます。伝統的な形を受け継ぎながらも、どこかモダンで軽やかな味わいを持つ一図です。




