狩猟文
— 生き生きとした動きが楽しい、狩猟の文様
弓を手に獲物を追う人物と、周囲を駆け回る動物たち。この裂地に描かれているのは、狩猟のひと場面を主題とした文様です。構図にはどこか即興的な軽やかさがあり、場面全体がにぎやかに動いているように感じられます。
日本では、狩猟は古くから人々の生活に根ざした営みでしたが、平安時代以降、貴族や武家のあいだでは、技や度胸を競う行いとしても楽しまれてきました。とくに鷹狩などは、武芸の鍛錬であると同時に、身分ある人々の嗜みとして位置づけられていたといわれています。

もっとも、この裂地から伝わってくるのは、そうした格式や儀礼性よりも、動きそのものの面白さです。人物の姿勢や動物の跳ねるような表現には、どこか力の抜けた素朴さがあり、見る側の緊張をふっとほどいてくれます。
服装には洋装を思わせる要素が見られる一方で、頭部には日本的な帽子のような形も描かれています。時代や様式を厳密に描き分けるというよりも、「狩りを楽しむ場面」を自由に組み立てた図柄であることがうかがえます。その曖昧さが、かえってこの文様の親しみやすさにつながっています。
花咲く野に人と動物が入り交じる様子を意匠化した狩猟文は、勇ましさの中にどこか華やかさを備えた文様でもあります。技巧や象徴性を前面に押し出すのではなく、ひと場面の躍動感をそのまま布の上に留めたような一枚。
眺めていると、物語の前後まで想像したくなる。そんな余白を残した、のびやかな狩猟文です。


