雪華と梅
— 冬の静けさに、春を重ねる文様
この文様は、明治31年(1898)に印刷・発行された木版の図案帖をもとにしています。近代へと向かう時代のなかで、伝統的な題材をどのように日常の意匠へと落とし込むか――そんな工夫が感じられる文様です。

画面に広がるのは、雪の結晶を花に見立てて意匠化した「雪華」と、寒中に咲き、芳香を放つ梅。江戸時代後期、雪の結晶が観察されるようになると、その規則正しいかたちは人々の関心を集め、装飾文様としても親しまれるようになりました。六角形を基本とした雪華文様には、自然の秩序や、静かな美しさが映し出されています。
一方の梅は、百花に先駆けて咲く花として、忍耐や生命力、春の訪れを告げる象徴とされてきました。
厳しい寒さのなかで、目には見えずとも香りで季節の変わり目を知らせる梅は、古くから人々の心に寄り添う存在でした。
この文様では、雪華と梅という冬と春をつなぐモチーフが重ね合わされています。
そこには、雪の静けさの中に芽生える春への気配や、季節が移ろっていく時間の流れが感じられます。
また、画面には斜めに流れるような文字が配されています。雪が舞う空気や、ほのかな香りが漂う景色の中に、言葉までも溶け込ませたかのような構成で、文様全体に詩的な余韻を添えています。文字は意味を伝える記号としてだけでなく、景色の一部として扱われているようにも見えます。
雪華の整ったかたち、梅の枝ぶり、そして斜めに広がる構成。いずれも簡潔な線で描かれながら、画面には静かな動きと奥行きが生まれています。冬の冷えた空気と、その先に訪れる春への願い――「雪華と梅文」は、そんな季節のはざまを味わう気持ちを映した、趣深い吉祥文様です。


