波に千鳥

— 波間を飛ぶ小さな鳥たちに託された、絆と安らぎの願い

古くから親しまれてきた「千鳥」は、実在の鳥というよりも、群れて飛び交う“小さな鳥たちの象徴”として、和歌や物語にたびたび登場してきました。万葉の歌にもその名が見え、波間を軽やかに舞う姿は、人々の目に“日々のささやかな喜び”として映ったのかもしれません。

本図案では、その千鳥が丸みを帯びた抽象的な姿にまで意匠化され、波の上を軽やかに飛んでいます。写実ではなく、輪郭をそぎ落としながらも「千鳥らしさ」だけを残す——明治期の図案家らしい、洗練された感覚が感じられるデザインです。

波は、時に荒々しく、時に静かに、寄せては返すリズムをくり返します。そんな波を千鳥たちは仲間とともに越えていく——その姿に、「夫婦の絆」や「家内安全」、「困難をともに乗り越える」というあたたかな願いが重ねられてきました。また、「千鳥=千取り」の語呂合わせから、“勝ち運”や“目標達成”を願う縁起物としても親しまれています。

この図案が収められた明治36年の図案帖では、ページ全体の見せ方にも工夫があります。周囲にあしらわれた笹の葉の意匠が、中央の波と千鳥をやわらかく引き立て、紙面に静かな季節感と余白を添えています。単に図案を載せるだけでなく、「一冊としてどう美しく見えるか」まで考え抜いた、当時の職人の遊び心と美意識が感じられます。

小さな千鳥たちが、波のリズムに合わせて軽やかに舞う。
その光景は、今を生きる私たちの姿にも重なり、
“日々をともに歩む仲間がいることの心強さ”を思い出させてくれます。

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