孔雀
— 大正の西陣に描かれた、華やぎと守りの象徴
この文様のもとになっているのは、大正九年(1920年)に描かれた、西陣帯のための図案です。大正時代は、西洋文化の流入によって暮らしや美意識が大きく変化する一方で、日本の伝統的な意匠をどのように次の時代へつなぐかが模索されていた時代でもありました。西陣では、古くから親しまれてきた吉祥文様をもとに、構成や表現に工夫を凝らした図案が数多く生み出されています。

孔雀は、日本にもともと生息していた鳥ではなく、仏教とともに古代インドや中国を経て伝わったとされています。日本では奈良時代にはすでにその存在が知られ、寺院の装飾や工芸意匠の中で、特別な鳥として扱われてきました。現実の生き物でありながら、どこかこの世のものとは思えない姿が、人々の想像力をかき立ててきたのでしょう。
その姿と美しさから神格化されてきた孔雀は、害虫や毒蛇などを食べると信じられていたことから、悪霊を食べ邪気を払う瑞鳥としても尊ばれてきました。単なる装飾としてではなく、身を守り、災いを遠ざける存在として、文様や調度の中に取り入れられてきた背景があります。
この図案では、羽を広げた孔雀の姿を軸に、周囲を埋め尽くすように草花が配されています。写実的に描くのではなく、形を整理し、画面全体を一つの意匠としてまとめることで、のびやかで華やかな構成が生まれています。鳥と草花が隙間なく描かれた様子からは、仏教や交易とともに伝わったインドの更紗文様の趣もうかがえます。
また孔雀は、多くの羽を持ち、堂々と立つ姿から、「繁栄」や「長寿」の象徴ともされてきました。大正という変化の時代に、このような意味をもつ孔雀文様が帯の図案として描かれたことには、装いを通して未来への願いを託そうとする、人々の思いが重なっているようにも感じられます。


孔雀
その姿と色彩の美しさにより神格化されてきた孔雀。害虫や毒蛇などを食べるとされていることから、悪霊を食べ邪気を払う瑞鳥としても尊ばれてきました。色あざやかな草花と共に意匠化された、大胆で華やかな吉祥文様です。
Kujaku (Peacock)
Peacocks are considered gods thanks to their beautiful colors and their shape. Said to eat pests and venomous snakes, they are revered as auspicious birds that eat evil spirits and drive away bad energy. This is a brilliant and bold auspicious pattern that Adorned with colorful flowers.
