鶏頭

— 伸びゆく形を文様に写した植物図案

すっと伸びる茎の先に、粒の集まりのような花穂をつける鶏頭文様。
この図案では、花の姿をそのまま写し取るのではなく、線と点を用いて大胆に整理し、植物の特徴を簡潔に構成しています。

鶏頭は、奈良時代に大陸から伝わり、染料などにも用いられた実用的な植物でした。万葉集では「韓藍(からあい)」の名で詠まれ、日々の暮らしに近い存在として親しまれていたことがうかがえます。
近世以降になると、鶏の冠を思わせる花の姿から「鶏頭」と呼ばれるようになり、出世栄達や向上心を象徴する文様として、装いの中にも取り入れられていきました。

この図案が収められているのは、明治38年に印刷・発行された木版の図案帖です。
およそ13cm×19cmほどの画面の中に、花穂の密度、茎の伸びやかさ、葉の配置までが過不足なく整理され、鶏頭という植物の性格が、文様として的確に抽出されています。写実に寄りすぎず、それでいて鶏頭らしさを失わない――そのさじ加減に、当時の図案家の確かな目と技術が感じられます。

特に印象的なのは、花だけで完結させず、茎や葉の動きまで含めて文様として組み立てている点です。上下に配された花穂と、まっすぐに立つ茎の線が画面に安定感を与え、繰り返し用いられることを前提とした図案ならではのリズムと構成美が際立っています。

図案帖は、完成した意匠を鑑賞するためのものというより、次の仕事へとつながる発想の蓄積でもありました。ページをめくりながら、この図案を目にした職人や図案家たちもまた、どこかでこの「伸びる形」を帯や小物の意匠へと展開していったのかもしれません。

まっすぐに伸び、重なりながら形を成す鶏頭文様。そこには、目立ちすぎることなく、静かに前へ進もうとする願いが込められています。

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