宝相華

— 理想の美をかたちにした、想像の花

宝相華(ほうそうげ)は、唐草文様の一種で、牡丹や芍薬、柘榴など、さまざまな花のもっとも美しい部分を組み合わせて生まれた、空想上の花です。実在の植物を写すのではなく、花という存在がもつ華やかさや豊かさを、一つのかたちにまとめあげた文様とされています。

その源流はインドの仏教美術にあり、シルクロードを経て中国へ伝わり、唐代に装飾文様として洗練されました。日本へは奈良時代、仏教文化とともにもたらされ、寺院の装飾や、天皇・貴族の調度品などに用いられていきます。極楽浄土の花を思わせるその姿は、豊かさや長寿、繁栄を象徴する縁起の良い文様として受け入れられてきました。

宝相華の大きな特徴は、特定の花に意味が固定されないことです。見る人や時代によって受け取り方が変わっても、文様としての価値が揺らぎにくく、蔓が伸び、花が咲き、また次へとつながっていく構成は、どこを切り取っても調和が保たれるよう、よく考えられています。

この文様のもとになっているのは、明治〜大正期の西陣帯に使われていた裂地です。
一枚の帯として完成したものではなく、小さな裂地が貼り合わされ、図案や織りの表現を確かめるための資料のように残されていました。

限られた画面の中に、花の配置や蔓の流れを過不足なく収め、広がりや奥行きを感じさせる。そこからは、宝相華という文様がもつ構造の強さと、それを自在に扱っていた当時の織り手の感覚が伝わってきます。

宝相華は、花を描いた文様というよりも、人々が思い描いた理想の美しさそのものを形にした文様。
時代や装いが変わっても古びにくく、今もなお、静かに私たちの暮らしに寄り添い続けています。

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