秋草に蝶

— 季節のうつろいに、願いを託す文様

秋の野に咲く草花の間を、ひらひらと蝶が舞う――
「秋草に蝶」は、撫子、桔梗、女郎花といった秋の草花と、そこに集う蝶の姿を組み合わせた文様です。花も蝶も、それぞれが主張しすぎることなく、画面の中でほどよい距離を保ちながら配置され、全体に軽やかなリズムが生まれています。

この図案が収められているのは、明治29年に木版で印刷された図案帖です。一つひとつのモチーフは決して大きくありませんが、限られた枠の中に複数の草花と蝶を散らすことで、野に吹く風や、視線があちこちへ誘われるような広がりが感じられます。文様でありながら、どこか一場面を切り取ったような、物語性を帯びた構成が魅力です。

秋の草花は、古くから和歌や絵画の題材として親しまれてきました。春の花のような華やかさではなく、盛りを過ぎつつもなお美しい姿に、人々は季節の移ろいや人生の趣を重ねてきたのです。撫子の可憐さ、桔梗の凛とした佇まい、女郎花の素朴な群れ咲き――それぞれの個性が、簡潔な線と形によって的確に捉えられています。

そこに添えられた蝶は、文様に動きを与える存在です。中国では蝶を「ディエ」と読み、八十歳を意味する語と同音であることから、長寿の象徴とされてきました。また、つがいで仲良く飛ぶ姿から、夫婦円満や良縁の意味も持つ、たいへん縁起の良いモチーフです。この図案でも、蝶たちは花の間を思い思いに行き交い、静かな画面にやわらかな生命感を添えています。

注目したいのは、草花と蝶が写実的に描かれているわけではない点です。実物を忠実に再現するのではなく、形を整理し、省略しながら「らしさ」だけを残す。その結果、どの向きから見ても破綻のない、文様としての安定感が生まれています。身につけるものや日用品に用いられることを前提とした、実用的な美意識が感じられます。

秋草に蝶の文様には、長寿や円満といった吉祥の意味に加え、季節を味わい、変化を受け入れる心が込められているようにも思えます。華やかさを誇るのではなく、ささやかな美しさを慈しむ――そんな感覚が、明治の図案家たちの手を通して、今も静かに伝わってくる一柄です。

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