seisuke88® KYOTO

椿

—— 邪気を払う、常緑の守り木

ふっくらとした花びらをまとい、枝先でそっと咲く椿の図案。
花芯からのびる細かな線が淡く光を散らすようで、控えめなのに不思議と目を引きます。
どこか手のぬくもりが残るこの一枚は、明治36年(1903年) に発行された図案集に収められたもの。ちょうど“デザイン”という概念が日本で広がり始めた頃の空気を感じさせます。

椿は 日本で古くから親しまれてきた花木 で、古くから特別な存在でした。
春の訪れを知らせる木として“聖なる木”と敬われ、寺社の神事にも使われるほど。
今でこそ冬に咲く花は珍しくありませんが、当時の人々にとって椿は、「春がもうすぐやってくる」 という確かな兆しだったのです。

また椿は 冬でも青々と葉を保つ常緑樹 で、変わらぬ生命力の象徴とされてきました。
そのため古くから、「邪気を払う」「家を守る」という厄除けの意味を持つ木として、人々の暮らしのそばに植えられてきました。
寒さが厳しい季節、庭に咲いた一輪の椿が家の中に安心をもたらす——そんな生活の感覚がそこにあります。

明治期の図案家たちは、この椿の静かな強さとあたたかさをよくとらえていました。
丸みを帯びた花姿、リズムよく配置された葉、すっと伸びる枝の動き。
派手ではないのに、じんわりと心に残る存在感があります。

春を呼び、厄を払い、長く日本人の暮らしを見守ってきた椿。
そのどっしりとした美しさが、この明治の図案にも静かに息づいています。

モバイルバージョンを終了