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花唐草

— 連なり、広がる生命のかたち

この文様のもとになっているのは、明治から大正期にかけて織られた西陣帯の裂地です。
一枚の帯として完成したものではなく、さまざまな裂地が集められ、貼り合わされるように残されていました。その姿は、意匠や織りの表現を確かめるための資料帳、あるいはスクラップブックのようにも見えます。

花唐草は、蔓や葉がしなやかに伸び、絡み合いながら画面全体へと広がっていく文様です。
唐草文様は、古代の西アジアや地中海沿岸で生まれた植物文様が、シルクロードを通じて中国へ伝わり、奈良時代に日本にもたらされたと考えられています。
そこに可憐な空想上の花を組み合わせたものが「花唐草」と呼ばれ、異国の趣と日本的な装飾感覚がほどよく重なった意匠として親しまれてきました。

この文様が長く愛されてきた理由のひとつは、終わりを感じさせない構成にあります。
蔓がどこまでも続く姿は、一族の繁栄や長寿を象徴する吉祥の意味を持ち、時代や立場を超えて受け入れられてきました。また、特定の物語や権威に強く結びつかないため、見る人の感覚に合わせて表情を変え、時代が移り変わっても古さを感じさせにくい文様でもあります。

明治から大正期の西陣では、こうした伝統的な文様をもとに、限られた画面の中でいかに美しく見せるかが工夫されました。
この裂地にも、小さな面積の中に要素を過不足なく収め、全体として心地よい流れを生み出そうとする、当時の織り手の技術と感覚が凝縮されています。

眺めていると、自然と視線が文様の中を巡り、気持ちまでゆったりとほどけていく。
花唐草文は、そんな静かな豊かさを伝えてくれる文様です。

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