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秋草「百華」

— 移ろいを愛でる、やさしい季節の文様

大正初期の西陣帯のこの図案には、「百華(ひゃっか)」という名前が添えられています。
秋から冬にかけて野に咲く草花が寄り添うように描かれ、そのにぎわいをそのまま写し取ったような、あたたかみのある図案です。

そよ風に揺れる萩、ほのかな光を受けて立つ薄(すすき)、可憐に咲く撫子(なでしこ)。
女郎花(おみなえし)、桔梗(ききょう)、そして早い冬を告げる水仙——。
秋から冬にかけて野に自生する草花を取り合わせ、品よく意匠化したのが「秋草」の文様です。

これらの草花は古くから和歌や屏風絵にも多く登場し、季節の移ろいをそっと知らせる存在として親しまれてきました。ひとつひとつは控えめでありながら、集まることで奥行きや華やぎが生まれる——そんな日本らしい美意識が、この図案に息づいています。

「百華」の図案が描かれた大正初期は、西陣でも伝統と新しい感覚が交差した時代でした。
細やかな線の運びや、草花がゆるやかに重なりあう配置には、古典の優雅さを守りつつ、どこか軽やかでモダンな空気が漂います。帯の図案として生まれたこともあり、織りの表情を意識した細部の工夫が見て取れます。

秋草は吉祥文としても長く愛されてきました。
萩には「繁栄」、薄は「収穫」、撫子は「子どもの成長」、桔梗は「誠実」、水仙は「清らかさ」など、それぞれの花に願いが込められています。季節の草花が寄り添う姿は、調和や豊かさの象徴でもあります。

移ろう季節の気配をやわらかに宿した秋草。
その豊かな表情を映し取った「百華」の図案には、日本人が昔から大切にしてきた季節へのまなざしが穏やかに息づいています。

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